煎茶の古書の紹介


 中国で、日本で、古くから数多くの煎茶に関する書物が出版されています。江戸時代、明治時代の書物は、特殊な写本などを除いて流に関する礼式についての記述はありません。茶の品質、歴史、煎法(技術的)、器具の解説などに関するものです。ここに紹介した書物の中、「煎茶式」は礼式についても書かれていますが流儀としてでなく、一般論として扱われています。煎茶道の歴史を知る上でも、古書も読んで見たいものです。また、ここに紹介した書物以外にも数多くの書物があり、明治時代に多く発行された茶会図録も当時の煎茶を知る上で目を通したい。



『茶経』
ちゃきょう 
唐 陸羽(760年頃)
 中国唐時代に陸羽が著した書物で、茶書として最初のもの。日本にも早くに輸入、翻刻され、喫茶文化に及ぼした影響は大きい。相国寺大典の「茶経詳説」を始め、多くの注訳書が出されている。
   
『清湾茶話』
せいわんさわ 三巻
宝暦6年(1756)刊 
大枝流芳
 煎茶趣味の解説書としてまとめられた最初の書。再版以後は『煎茶仕用集』と改題され、大正期まで大いに流布した。
    
『売茶翁偈語』
ばいさおうげご 
宝暦13年(1763)刊
 売茶翁の詩偈集。翁の煎茶に対する精神を知るうえで貴重な書物。巻頭に大典の「売茶翁伝」をのせている。翁の著書としてはほかに『梅山種茶譜略』があり、「対客言志」の一文も残っている。
   
『清風瑣言』
せいふうさげん
寛政6年(1794)刊
上田秋成
 煎茶の解説書として最も著名なもので、村瀬栲亭の序に始まり、歴史、茶葉の品解、煎法、弁水等を中国茶書に原拠を求めながら、秋成自身の考え方も記し、煎茶初期の最も重要な文献といえる。多くの再録出版物がある。
    
『煎茶早指南』
せんちゃはやしなん
享和2年(1802)刊
嵐翠子
 『煎茶略説』をもとに、平易通俗に図解したもの。序文によると初版本は『自弁茶略』であったらしい。著者は元来抹茶家で、抹茶の影響が見られる。
   
『泡茶新書三種』
ほうちゃしんしょさんしゅ
天保元年(1830)刊
田能村竹田
 『茶具図譜』『竹田荘茶説』『泡茶訣』の三冊。
文庫本ぐらいの小さな本。著者竹田の煎茶趣味を知ることができる。また『茶具図譜』(石山斎茶具図譜再録)の茶器図は、その後の書物によく引用される。
   
『煎茶綺言』
せんちゃきげん
2巻
安政4〜5年(1857〜8)刊
売茶東牛
 
 『烹茶樵書』(ほうちゃしょうしょ・曽占春著・享和3年刊)を原書として書かれ、「煎茶家系譜」をのせている。明治4年度版(?)まで何度も改版されている。信頼できない記述も多く、名著ながら信憑性に乏しい。
 
   
『後楽堂喫茶弁』
こうらくどうきっさべん
安政4年(1857)刊
小川可進
 
 京都の医師で煎茶家だった小川可進の口述を、弟子がまとめて出版したもの。内容的には陰陽五行説で煎茶を論じ、茶書としては特異な書。
 
   
『木石居煎茶訣』
ぼくせききょせんちゃけつ
嘉永2年(1849)刊
深田靖一
 本書は上下2巻から成り、上巻では図解入りで煎茶具を解説。下巻には著者の煎茶論などをのせている。幕末の煎茶を知るうえでは好資料といえる。
   
『煎茶式』
せんちゃしき
明治42年(1909)刊
大塚杉陰
 図解入りで、煎茶会について、主客の礼式、器具など具体的に解説されており、当時の煎茶会の様子を知ることが出来る。特定の流にとらわれることなく、判りやすく書かれている活字本で、現代の茶席にも参考になる。
   
『煎茶志』
せんちゃし
昭和四十年(1965)刊
長谷川瀟々居
 煎茶全般について考証を加え、中国の茶史から日本煎茶史、さらに茶器、茶書についても論評している。戦後出版された研究書として、水準の高い論稿であり、煎茶研究の基本書ともいうべきものである。

 昭和五十七年再刊、平成十二年再々刊
 平凡社 価格四,八三〇円(税込)
 
 こちらの書籍をご希望の方は、お申込先をお知らせ致しますのでご連絡下さい。
 この本はお取次ぎ図書となります。

トップページへ戻る